ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 組織・課名でさがす > 生涯学習課 > 叢書・江別に生きる 10 『野幌原始林物語 ―森と人々とのシンフォニー―』

叢書・江別に生きる 10 『野幌原始林物語 ―森と人々とのシンフォニー―』

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年3月8日更新

野幌原始林物語

野幌原始林物語 小山心平、坂本与市、西田秀子、藤倉徹夫、松山 潤、村野紀雄 著 2002年3月発行 定価1,800円(消費税込み)

 


 時は春。森には白い辛夷が咲き乱れ、いま、目覚めたばかりの落葉松のもえぎ色の樹間のむこうに、ところまだら冬化粧の夕張山脈の麗姿がくっきりと浮かびあがる。

 草叢に野うさぎが跳梁し、梢から梢へとエゾモモンガが空中遊泳する。澄んだ野鳥の声が森を越え、五月の蒼穹にこだまする。足許からは、土と水の匂い、草の匂い、木の匂い、それらが一斉に駆けのぼり胸中に飛び込み、胸奥に淀む日常の辛気な仕事のこと、大儀な人間関係、妻との不和、子供の不仕末などなど、あれやこれやが一掃され、透明に純化されていく。(森は)まさに壺中の天地だ。

(第2章「森林防火組合の人びと」藤倉徹夫) 

目 次

原始林ひとり歩き ―序― 坂本与市

森へのいざない/いのちの季節

第一部 森を守り、森に生きた人々

第一章 野幌原始林は残った・・・・・・・・・・松山 潤

1 原始林分割払い下げの危機

電報来たる/四月一日 出札/四月二日 長官に会う/四月四日 事態進展せず/四月五日 緊急集会開かれる/四月六日 警察動き出す/四月七日 長官上京/四月八日 ついに長官に会う

2 鉄窓観月また風流、草莽の志士・大橋一蔵の開拓事業

北越殖民社の誕生/指導者・大橋一蔵/率先、北海道開拓へ/越後村への入植/突然の死

3 北越の民、いざ北の大地へ

責任分担で募集/土地もちになりたい/いざ、北へ向け出航/樹木深密ニシテ天ヲ見ズ/開拓の鍬入る/収穫始まる/炭焼きの進展/開拓民の住居/生活水と衣服/厳しい日常生活規制

4 関矢孫左衛門の髪の毛

勤王の志士として/形見分けして出陣/群長として銀行頭取として/二兎ヲ追者一兎ヲモ得ズ/孫左衛門の魂、ここに留まる

5 森の恩恵、残された森と未来への伝言

水田の水源として/飲料水、生活水として/防風林、防雪林として/用材、薪材、「山仕事」として/林内副産物の採取/気候調整林として/森林景観として、生活歴として/山師の闊歩する森林荒廃の時代/かくて魔窟殿の観をなせり/石狩大平原に冠たる原始林

第二章 森林防火組合の人びと・・・・・・・・・・藤倉徹夫

1 樹木森々タリ

森との出会い/山野茫々

2 防火組合の誕生

組合の設立/巡視活動/森は泣いている

3 森の恵み

薪用材払い下げ/山菜/キャンピング

4 戦後・再出発

愛護組合の誕生/洞爺丸台風/都市化の波

5 森と都市

児童と愛林活動/連合会の解散

第三章 林業試験場の人びと・・・・・・・・・・西田秀子

1 北海道林業の夜明けと林常夫

「国有林整理綱領」の策定/風の学者 ― 林常夫

2 林業試験場の開設

前史 ― 野幌官林の変遷/「東洋無比」の試験場を志分別に/始業期の人びと 斉藤晋作と新島善直/第一次世界大戦と好景気伐採

3 大正期の森林保存政策と林駒之助

国有林調査終了/謹厳実直の人 ― 林駒之助

4 自然保護思想の台頭と野幌原始林の転換期

「天然保存林区」の設定と「史蹟名勝天然記念物」指定/野幌牡蠣林間大学の開催/野幌官林「森林公園」化の申願

5 林業試験場の発展期

伊達屋敷への移転/林内移民の入植/山祭り/景勝地協会と観光ブーム

6 戦時下の林業試験場

林常夫と山本五十六/陸軍大演習と天皇の行幸/林駒之助の事故死と頌徳碑建立/林業試験場と江別町/供木運動と天然記念物の危機/人も木も…戦時動員

7 戦後のあゆみ

復興と再生のはざまで/野幌国有林解放の是非/林業試験場の統合と試験林の変遷/「特別天然記念物」指定と解除

8 二十一世紀の林業家たち ― 林木育種センターの実験

山林(やま)を愛した二人の功労者と人びと/二十一世紀の林業家たち ― 天然記念物クローン実験

第二部 原始林余話

第一章 農村に生きる-『野幌部落史』を書いた関矢マリ子と留作・・・・・・・・・・西田秀子

1 新潟から野幌へ~戦前の生活

『野幌部落史』について/結婚/留作と野呂榮太郎/関矢マリ子の生い立ち/マルクス主義に傾倒/関矢留作の生い立ち/東大農経から農民運動へ/四・一六検挙と見合い/壁の中の思索とマリ子への恋文/獄中書簡/帰郷・『野幌部落史』の調査/留作の急死

2 思索と執筆~戦時下の生活

『野幌部落史』の脱稿/『野幌部落小史』の発表/新聞・雑誌への執筆開始

3 北海道史研究家として ~戦後の生活と活動

「あなた戦争は終わりましたよ」/農地改革とラデジンスキーの視察/『野幌部落史』 ― もうひとつの『日本資本主義発達史』の刊行/北海道史・女性史研究家として/晩年のマリ子/千本林と欅

第二章 機農学校の齢七先生・・・・・・・・・・小山心平

1 ある遺作色紙展
2 原始林を眺めて育つ少年

空知農学校時代

3 「ためになる」と喜んだ受講の農村青年たち

野幌実科農学校/野幌実科農学校の教員になる/教育に対する一種の狂気が……/結婚

4 野幌機農学校の創設

ジンギスカンの味/野幌機農学校の創設~第一期生苦闘の第一歩/札幌まで入浴に行く

5 北方機農派遣隊の引率

父の家庭教育観

6 野幌機農学校の“ドッコイさん”

ニックネーム「ドッコイさん」の由来/機農高校教師同僚が語る五十嵐齢七の実像/仕送りの話

7 暗箱写真機をかついで村人の暮らしを撮影

写真を通して伺える齢七の教科書

8 読むのが楽しい齢七の教科書

作って食べる喜び

9 脳卒中で倒れる ~左手で字を書き絵を描く~

父と母への思い/五十嵐齢七(一九九八)『画集野幌開拓のころ』

10 「死んだら村の寺で…」

第三部 原始林の自然

 原始林の自然―四季と生きものたち― ・・・・・・・・・村野紀雄

1 四季

2 生きものたち(動植物目録)

あとがき・・・・・・・・・坂本与市