叢書・江別に生きる 2 『れんがと女』
藤倉徹夫 著 1989年12月発行 定価1,500円(消費税込み)
そうです、そうです。煉瓦場あたりは、男より女ですよ。
だいたいね、女の方が倍おりますから。本当にね、なくてはならない箇所には男ですけど、その他はみんな女ですからね。
女がいなくっちゃぁ、はっきり言いますと、煉瓦工場は成り立ちませんよ。
みなさん力持ちだしねぇ。なんて言いますかね、一緒の時間に出て、一緒の時間におわって、それから女は、ご飯の支度、子供を生んで、子供を育てて、家計のやりくりもあるし…もう、大変だと思いますよ。
(本文より)
本書は往時のれんが工場に生きた四人の女性を語り部とした物語であります。ふとした出会いがなければ、ついぞ我々の心にとどまることなく終わってしまったかもしれない、れんが工場の底辺を支えてきた女性たちの口語りであります。
(-序-より)
目 次 (一部抜粋)
第一章 シッペの歌 N・N(七十歳)さんの話
駒取り 結束…辛いつらい
夏の夜は スダレ天井で寝ます
桜が咲くにつけ散るにつけ…
第二章 煮〆の味 K・N(七十四歳)さんの話
喰わんがために 頑張りました
忍術も算術もありません
味わい深い 仲間たち
第三章 姐さん稼業 M・T(七十九歳)さんの話
シッペの音は お天気予報
あの頃 悪阻なんてなかったよ
手抜きなら もう一度やりたい
*手抜き…初期の煉瓦成型作業は、原土を採取し、それを練り、粘土塊を作って、それを「抜き枠」に叩きつけて抜く、いわゆる手抜き作業であった。普通の人で一日七百-八百本、腕のいい人で千二百本前後は抜いたといわれる。
第四章 トロンコ人生 R・Oさん(七十四歳)さんの話
トロンコ押し
ホオズキの根を煎じて飲めば
風邪を覚悟の交友館