平成29年度から適用される個人住民税の税制改正
1 給与所得控除の改正
(1)給与所得控除上限額の変更
給与所得控除の上限額が、下記のとおり引下げられます。
現行 | 29年度(28年分) | 30年度(29年分)以降 | |
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上限額が適用される給与収入額 | 1,500万円 | 1,200万円 | 1,000万円 |
給与所得控除の上限額 | 245万円 | 230万円 | 220万円 |
(2)給与所得の計算表 (単位:円)
平成25年分~平成27年分の所得税 (平成26年度~平成28年度の住民税) |
平成28年分の所得税 (平成29年度の住民税) |
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収入金額(A) | 給与所得金額 | 収入金額(A) | 給与所得金額 | |
0~650,999 | 0 | 0~650,999 | 現行に同じ | |
651,000~1,618,999 | A-650,000 |
651,000~1,618,999 |
||
1,619,000~1,619,999 | 969,000 | 1,619,000~1,619,999 | ||
1,620,000~1,621,999 | 970,000 | 1,620,000~1,621,999 | ||
1,622,000~1,623,999 | 972,000 | 1,622,000~1,623,999 | ||
1,624,000~1,627,999 | 974,000 | 1,624,000~1,627,999 | ||
1,628,000~1,799,999 |
A÷4=B 千円未満の端数切捨て |
B×2.4 | 1,628,000~1,799,999 | |
1,800,000~3,599,999 | B×2.8-180,000 | 1,800,000~3,599,999 | ||
3,600,000~6,599,999 | B×3.2-540,000 | 3,600,000~6,599,999 | ||
6,600,000~9,999,999 | A×0.9-1,200,000 | 6,600,000~9,999,999 | ||
10,000,000~14,999,999 | A×0.95-1,700,000 | 10,000,000~11,999,999 | A×0.95-1,700,000 | |
15,000,000 | A-2,450,000 | 12,000,000~ | A-2,300,000 |
2 日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等の義務化
日本国外に居住する親族(国外居住親族)に係る扶養控除等の適正化の観点から、所得税の確定申告や個人住民税の申告等において、国外居住親族に係る扶養控除・配偶者控除・障害者控除(16歳未満の扶養親族を含む)の適用を受ける場合は、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を添付または提示しなければならないことになりました。
ただし、給与等の年末調整の際に「親族関係書類」及び「送金関係書類」について、源泉徴収義務者に提出または提示した場合には、確定申告または市民税・道民税申告において添付または提示する必要はありません。
(1)親族関係書類とは
「親族関係書類」とは、次の1または2のいずれかの書類(外国語で作成されている場合には日本語での翻訳文も必要です)で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。
1: 戸籍の附票の写しその他の国または地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポートの写し)
2: 外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所または居所の記載があるものに限ります。)
(2)送金関係書類とは
「送金関係書類」とは、次の1または2いずれかの書類(外国語で作成されている場合には日本語での翻訳文も必要です)で、居住者がその年において国外居住親族の生活費または教育費に充てるための支払いを必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
1:金融機関の書類またはその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払いをしたことを明らかにする書類
2:いわゆるクレジットカード発行会社の書類またはその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、または受領することとなることを明らかにする書類
※詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
3 金融所得課税の一体化
公社債等については、利子・譲渡・償還によって課税の仕組みが異なっていましたが、税負担に左右されずに金融商品を選択できるよう、異なる課税方式の均衡化を図る観点から、公社債等の課税方式を株式等の課税方式と同一化することとされました。
また、特定公社債等の利子及び譲渡損益並びに上場株式等の金融商品間の損益通算の範囲を拡大し、3年間の繰り越し控除ができることとされました。
(1)公社債の課税方式の変更
公社債については、特定公社債等と一般公社債等に区分した上で、課税方式が変更されました。
(特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除く)などの一定の公社債をいいます。)
特定公社債等 | 一般公社債等 |
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特定公社債 | 特定公社債以外の公社債 |
公募公社債投資信託の受益権 | 私募公社債投資信託の受益権 |
証券投資信託以外の公募公社債投資信託の受益権 | 証券投資信託以外の私募公社債投資信託の受益権 |
特定目的信託の社債的受益権での公募のもの |
特定目的信託の社債的受益権での私募のもの |
※平成28年1月1日以降に行う割引債の償還及び譲渡については、20%の申告分離課税の対象とされました。平成27年12月31日以前に発行された償還差益が発行時に源泉徴収の対象とされたものについては、18%の源泉分離課税(所得税18%、住民税非課税)が維持されています。
(注意1)所得税においては、平成25年から平成49年までの間に生じる所得について、確定申告や源泉徴収の際には、表中の税率とは別に2.1%の復興所得税が課されます。
(注意2)平成28年1月1日から特定公社債等についても、特定口座で計算される所得の対象として受け入れることができることとされました。
(注意3)平成28年1月1日以後、特定公社債等の利子等については、利子割(住民税5%)の課税対象から除外した上で、配当割の課税対象とされました。
(注意4)源泉徴収選択特定口座内の特定公社債等の譲渡所得として申告した場合、株式譲渡割の課税対象とされました。
改正前 平成27年12月31日以前 |
改正後 平成28年1月1日以降 |
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内容 |
所得区分 |
公社債等 | 特定公社債等 | 一般公社債等 | |
利息 利子 |
利子所得 |
源泉分離課税(申告不要) 20%(所得税15%、住民税5%) |
申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%) ※申告不要とした場合、譲渡所得との損益通算はできません。 |
源泉分離課税(申告不要)20%(所得税15%、住民税5%) | |
売却益 譲渡損益 |
譲渡所得 |
非課税 |
譲渡所得として申告分離課税20% (所得税15%、住民税5%) ※確定申告により、3年間損失の繰越控除が可能 |
譲渡所得として申告分離課税20% (所得税15%、住民税5%) |
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償還差益 | 雑所得 |
総合課税 (所得税5~45%超累進課税率、住民税10%) ※割引債は発行時18%の源泉分離課税(所得税18%、住民税非課税) |
(2)損益通算・繰越控除・分離課税制度の改組
従来可能であった「上場株式等」と「一般株式等(未上場株式等)」の間での損益通算ができなくなりました。平成28年1月からは、次の1と2の区分による別々の分離課税制度になりました。
区分 | 各区分内の損益通算 | 各区分内の繰越控除 | |
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1 | 特定公社債及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税(申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得との損益通算も可能) | 可能 | 可能 |
2 | 一般公社債及び一般株式等(未上場株式等)に係る譲渡所得の分離課税 | 可能 | 不可能 |
※詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
4 平成30年度から適用される個人住民税の税制改正
医療費控除の特例(スイッチOTC薬控除)の創設
健康の維持増進や疾病の予防への取り組みとして、一定の取り組みを行う人が、平成29年1月1日以降に、自己または自己と生計を一にする配偶者その他親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額の合計が1万2千円を超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には8万8千円)については、その年分の総所得金額等から控除することができます。
ただし、本特例の適用を受ける場合には、現行の医療費控除の適用を受けることができません。
詳しくは、厚生労働省ホームページにて確認できます。
※スイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品のことをいいます。