第7回 匠プレス工業株式会社
企業と行政のトップが対談。市内企業の魅力や思いを市長が聞き出します。
灯油ホームタンクやキッチンシンクなど、高度なプレス製品を製造する、匠プレス工業株式会社の平田社長を三好市長が訪問しました。
【三好市長】
昭和31年に創業されたということで、もう創業から66年になるんですね。
【平田社長】
創業当時は札幌市の東札幌に工場があり、ステンレスキッチンの生産がメインでした。その後、昭和48年に灯油ホームタンクの生産を始めましたが、その頃は年間で4万台から5万台くらい作っており、とても売れましたね。
現在はその他に、アウトドア用キッチン、信号機、エアコン室外機用のフード、LED誘導灯の外枠などを主に製造しています。
【三好市長】
昭和30年代というまだ石炭ストーブの時代に創業され、その後、灯油ストーブやエアコンの使用といった市民生活の変化に対応しながら、色々な製品を開発されたのですね。
【平田社長】
そうですね。あとは年間大した個数ではありませんが特殊用途のヘルメットも製造しています。
これがヘルメットの現物です。純チタン製です。
【三好市長】
けっこう重たいんですね。
最近のゴルフドライバーはチタン製が多いですが、重さ300グラム以下の物があるので、軽いというイメージがありました。
【平田社長】
1枚の純チタンの板をヘルメットの形にプレス成形した後にカットして作ります。チタン自体は軽いものですが、この製品は耐弾式で、ある程度の厚さがありますので、このくらいの重さにはなりますね。
【三好市長】
現在、新しく建設する市営住宅に市内企業が製造した家具を積極的に取り入れておりまして、匠プレス工業さんが製造したキッチンシンクも使わせていただいております。キッチンシンクの製造はもともと溶接で成形されていましたよね。
【平田社長】
最初は溶接でしたけど、プレス成形で製造できるようになりました。
こうした技術が信号機の生産でも使われるようになっています。いま製造している信号機は溶接しているところが1か所もないんですよ。溶接するとステンレスでもさびてきますし、水が中に入る可能性もあります。水は絶対に入ってはいけませんから。
【三好市長】
これは特殊な技術なのですか。
【平田社長】
そうですね。溶接の場合は1つずつ接合していかなければなりませんが、プレスの場合は一発ですべてを接合できますから効率的で、コスト的にもメリットがあります。私たちはできるだけ溶接をなくしたいという思いで開発を行い、さびずに長持ちする信号機を製造することができました。
【三好市長】
この信号機は道内で使われているのですか。
【平田社長】
全国ですね。信号機を作るメーカーはそんなに無いですから。
【三好市長】
こうした製品を作ることによって、他の製品も含めた宣伝になったのではないでしょうか。
【平田社長】
色々なものをプレスで作る事ができる技術があるということで、宣伝にはなりましたね。
現在当社にある一番大きな1000トンプレス機は地上3階くらい、地下3階くらいの大きさがあるんですよ。それくらいの大きさがなければしっかり圧力をかけられないんです。こうしたプレス機は他ではあまりないですし、プレス成形でやるという技術そのものが少ないですよね。
【三好市長】
キッチンシンクにしても信号機にしても、金型を作って規格に合わせてプレスするわけですよね。最初の金型を作る工程が一番大変なのではないかと思うんですが。
【平田社長】
テスト品やサンプル品を作るだけでもかなり大変なんですよ。
信号機を作る話が来たときも最初は技術的な部分でとても苦労しました。継ぎ目のないくぼみを規格に合わせて成形しなければならないので、金型を作るだけでも3か月から4か月位の時間がかかりますし、相当のお金をかけないといけません。
【三好市長】
アウトドア用のキッチンは本州からの需要がかなり多いんですか。
【平田社長】
本州が多いですね。アウトドアキッチンは当社でシンクの部分を作り、新潟の企業がシンク以外の部分を取り付けて完成します。大手ホームセンターなどの小売店販売ルートがありますが、最近はインターネットでの販売が多いですね。
【三好市長】
通常のキッチンの場合も匠プレス工業さんでシンクの部分だけ作って、その他の部分は別の企業が作っているのですか。
【平田社長】
当社の場合はキッチンを製造しているグループ企業が同じ敷地内にありまして、そこにシンク部分のみを卸して、最終的にキッチンとして製品化して市場に持っていく形です。
【三好市長】
この他にも他社ブランドの製品を製造するOEMの注文が全国から来ているそうですね。
【平田社長】
最近は名の知れた大手メーカーさんからもこういった製品ができないかという相談をよく受けます。当社はホームタンクやステンレスキッチンをメインに製造していますが、同業者からの依頼もありまして、自社ではなかなか製造できない製品の相談が来ますね。
【三好市長】
大手メーカーや同業者からも評価されているのですね。OEM商品の他に自社の独自ブランドを作って販売することは考えていないのでしょうか。
【平田社長】
自社ブランドで作って売れれば一番良いのですが、このような分野になってくると、他社メーカーとの競争力の面でなかなか難しいと思っています。
例えば、当社で長年製造している灯油ホームタンク1つとっても、現在の生産数は作り始めた昭和50年頃の10分の1になっており、エネルギー需要も時代によって変わってくるので、自社ブランド化するとこうした変化に対応するのも大変です。
我々の企業はあまり表に名前が出てきませんが、他社メーカーの製品にうちの技術が活かされていけるのであれば、それはそれで良いのかなと思っています。技術だけは今も買っていただいていますし、このような匠プレス工業でなければできないという技術力を持っていれば自然と色々な話が来ますからね。
【三好市長】
今後はどのような方向に向かっていきたいと考えていますでしょうか。
【平田社長】
まずは我々が対応できるものについては色々と取り入れていきたいと思っています。そして、プレスの技術では匠プレス工業にはかなわないと言われるようになっていければと思います。
今まで行ってきた設備投資についてはある程度の目処が立ってきましたので、土地や建物、プレス機といった次の投資も考えていきたいと思っています。
【三好市長】
ぜひこれからも、匠プレス工業さんならではの製品を作っていただいて、江別ブランドにして頂ければと思います。