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平成16年第2回江別市議会会議録(第3号)平成16年6月11日 5ページ

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年1月30日更新

6 議事次第の続き

一般質問の続き

議長(宮澤 義明 君) 

 以上をもって、高橋議員の一般質問を終結いたします。
 一般質問を続行いたします。
 吉本議員の教育行政についての質問を許します。通告時間20分。

吉本 和子 君

 通告に従いまして、順次質問を行います。
 初めに、国連子どもの権利条約について伺います。
 1989年の第44回国連総会で採択された子どもの権利条約は、子供の権利についての認識を大きく前進させるもので、発展途上国やマイノリティの位置に置かれている子供たちの困難な状況に対応して、その生命や健康、そして教育などを保障するために、子供にどのような配慮と教育、権利が与えられるべきかを明らかにしました。
また、同時に、先進国においても、子供が置かれている無権利な状態を浮かび上がらせて、子供を人権の主体として位置付けて、それにふさわしい権利を回復させることを求めるものでした。
 1994年に日本はこの条約に批准しましたが、その後の日本においては、多くの子供たちが受験戦争に追いやられて、人間的な生活を奪われ、また学校では、教育的な配慮や教育活動の名の下に教師の体罰や校則などで子供の人権が制限される、こんな状況にありました。
 国連子どもの権利委員会は、1998年に第1回の日本政府に対して日本政府報告書の審査では、極度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、子供が発達障がいに陥っていると勧告しました。そして、今年は第2回目の審査、レポートによりますと、この前回の勧告に対して、不登校や自殺につながるストレスフルな環境の根本的な解決はどうなのか、また、5日制にした、学習指導要領を新しくした、だからといってストレスは減っているのか、問題の核心に迫らなければ駄目だなどと鋭い質問があり、そして最終所見では、教育制度の過度に競争的な性格が、子供の肉体的・精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、かつ子供が最大限可能なまでに発達することを妨げていると、その是正を再度強く求めています。
1点目に、国連子どもの権利委員会の日本の教育制度に対するこの厳しい指摘に対して、江別市の教育行政の責任者としてはどのようにお考えになるのか、お聞かせください。
 さらに、権利委員会では最終所見の中で、第2次世界大戦後、ずっと国家経済の発展を最優先する国策の一環として行われてきている日本政府の子供施策は、根本的にかつ全面的に子どもの権利条約に違反しており、例えば子供の意見表明権の保障という新たな価値観に基づいて根本的に見直すように強く求めています。
 子供の意見表明権の保障は、家庭や学校、そして地域など、子供がかかわるすべての場において、子供を意見表明権の行使主体者として認識し、その意見を尊重すること、さらには学校などにおける方針決定プロセスへの子供の全面的な参加までも求めています。
 江別市においては、次世代育成行動計画策定に当たり、子供にもアンケート調査が行われましたが、このように子供の意見を直接聞くというようなことは、施策においては、まだ一部にとどまっていることと考えております。特に学校教育の問題においては、直接子供にかかわるものであり、勧告のいう自己の見解をまとめる能力のある子供たちに対しては、その子供の見解は、その年齢及び成熟度に従い、正当に重視されることが保障されなければならないとしています。それは、表現の自由の権利の具体的な展開であり、また大人の参政権のような社会参加の権利にもつながるものであります。
今後、江別市の子供にかかわる施策において子供の意見表明権を最大限反映させ、子供の視点に立った学校の在り方、教育の在り方が求められていると考えますが、この点についてどのようにお考えか伺います。
次に、学校選択制について伺います。
 学校選択制については、昨年の9月、市教委より導入の是非について提起され、8か月後の今年5月27日の教育委員会で、隣接校方式で平成17年4月より導入の決定となりました。この間、教育タウンミーティング、教育関係者意見交換会、通学区域審議会や教育委員会の傍聴等で学校選択制導入の根拠をその都度説明されてまいりましたけれども、保護者や教師から、なぜ今、江別にという根本的な疑問は消えないという声をいまだにたくさん聞いております。
 1番目に、学校選択制を江別で導入する根拠について、改めてお伺いいたします。
市教委は、学校教育法施行規則の一部改正で、学校選択制について市教委の判断により導入できる旨、法律で規定された、そのこと、また、通学区域の弾力化の視点により、制度として導入する必要がある、そのことを繰り返して述べてこられたと認識しております。
 その理由としては、指定校以外の学校を希望する様々な理由に可能な限り対応するためとしていたと認識しております。では、様々な理由とは、平成16年の第1回定例会で教育長は、一つには、指定校より近い学校に行きたい、二つに、幼稚園や保育園の友達と同じ学校に入学したい、三つ目に、部活動では指定校以外の学校へ入学したいなどという理由を挙げられました。
 しかし、その実態について伺ったところ、この点については説明して理解をしていただいたので、把握はしていないということでした。市教委が選択制導入の根拠の一つとして、この点について認識しているとは思えないような対応であり、このように希望する方々に対して、選択制度うんぬんの前に早急に検討すべき課題ではなかったのかと考えます。
 これらの希望にこたえる対策を考えるなら、まず通学区域の今の現状や、そして弾力化の視点の取り組みなどから検討する方法もあると考えますが、今回、学校選択制導入の是非について、そのことにのみ検討するとしたそのお考えについて、改めてお伺いいたします。
 2番目に、学校選択制導入に当たり、明らかになった制度の限界と矛盾について考えるところがありましたので、改めてお伺いいたします。
 学校選択制は、そもそも国の規制緩和策として、教育の場に市場原理を導入して、親に学校選択を認めさせ、学校間で競争させ、学校を活性化させようという考え方だ、これは文科省に勤務され、初等中等教育局長を務められた菱村幸彦氏が著書の中で言われています。
 江別市においては、子供たちが行きたい学校、親が行かせたい学校を選択できると、学校選択制導入を巡り、保護者や市民の間に一定の波紋を広げました。今、学校教育を何とかしたいと考えている保護者など多くの市民にとっては、一つの解決策になるのかという期待感を持ち、また選択する権利を保障する、個性に合わせた教育などという一見耳障りのいい言葉、このことによって、例えば親の自尊心、また親の権利意識が刺激され、この制度がいかに有効であるかと思われるように経過してきた、このような疑念を持つものであります。
 本来、選択制導入の是非を含め検討するはずが、導入を前提とする検討の流れに擦り替わり、結果としては、導入するために支障となる様々な問題を検討し、対症療法的な手当てをして、導入できるようにしてきたという、そのような感じを否めません。
 通学区域の弾力化の視点で見ても、市教委の学校選択制について基本的な考え方の中で、なお、通学区域制度の果たす役割から、現行の通学区域を維持する必要があると述べておられるように、今だからこそ、正に通学区域の役割、その本来の役割そのものの重要性について本当に見直さなければならないと思います。
 そもそも通学区域とは、子供の心身の発達段階に応じて徒歩で通学できる範囲であり、その中で子供は地域の自然や人情に触れて、地域の温かいまなざしの中で登下校を繰り返し、また友達づくりが自然にでき、保護者も教師も協力して教育参加ができ、地域の教育力が形成され、それが最も尊重される、そのような範囲が通学区域だと言われています。
 さらに、徒歩で通学できることは、保護者にとっては交通費の負担がなく、また教育基本法の義務教育は無償とするという原則からも、また経済的地位で教育上差別されないという教育の機会均等の原理からも、この通学区域の役割は大きなものがあります。
 その通学区域制度を維持しつつの学校選択制が、本来の規制緩和策として、市場原理として機能しないことは、選択できる範囲が大幅に制限された、そのことによって明らかになりました。
 江別市の場合、隣接校という限られた選択、その中で、実態としての隣接校がない、公共交通機関の利便性が低い、これらの条件に当てはまる農村地域では、選択にかかわる権利はどうなるのかという疑問。また、入学できる定員が限定され、結果としては抽選という形で学校が子供を選ぶというような矛盾。本来、子供が行きたい学校、親が行かせたい学校を選べることを保障すると言いながらも、現実には選択肢が限りなく限定されるという状況があります。これらのことは、この制度が持つ矛盾や限界の一つではないかと考えるものですが、どのように認識されているのか、お考えを改めて伺います。
 3番目に、学校選択制における選択という保護者の意識の問題について伺います。
 広報えべつ3月号の答申の中で、制度の周知と情報公開の徹底として、学校選択制になると、通学区域がなくなり、行く学校を必ず選択しなければならないと誤解されやすいことから、現行通学区域を維持し、子供や保護者の希望により、指定校以外の学校も選択できることを周知徹底すべき、また通学区域審議会の中では、指定された学校に通学した場合は、選択したという認識は持たないかもしれないとも言われているように、現行の通学区域制度を残し、そこに選択制を導入することの混乱があります。
 当初の保護者アンケートからも、多くの保護者は従来どおり通学区域の指定校に通学することを望み、申請などせず、従来どおり地元の学校に通う、このプロセスには指定校を選択したという意識はなじみにくく、通学区域以外の学校を希望し、そこに通学するための手続を踏み、通学して初めて選択したことを意識されるものではないでしょうか。
指定校であっても、選択校であっても、選択したことになるというこの論理には、いささか強引な意識操作という感じを否めませんが、選択しない自由も認めてという意見が保護者から出されることにもつながるのではないでしょうか。
学校選択制とは、選択しなくても選択したことになる、指定校も選択校になるという矛盾を感じるものですが、この点についてどのような認識をお持ちか、改めて伺います。
 4番目に、選択に伴う責任について伺います。
学校選択制については、たびたび、選択には責任が伴うこと、さらに、選択制を導入することによって保護者の責任感の向上が期待されるとも言われてきています。
 市教委は、学校選択制の基本姿勢の中で、子供の個性や希望に応じた学校の選択は、保護者や子供自身が自らの意思で入学する学校を決めるものであり、選択することへの責任も伴うものと述べています。
 教育長も3月の定例会では、選択には当然、その裏には親御さんの責任が伴います。ですから、これまでのように学校に預けっぱなしという状況から、今度は自分の責任の範ちゅうで、より学校に対する意識が生まれるものと答弁されました。
 選択に伴う責任とは、言い換えれば、選択したことへの責任、学校を選んだことへの責任、結果に対する責任などと連想するものですが、本来、子供の教育に対し、就学義務という責任を負う保護者が、新たに選択したことの責任を負うことになります。
 選択に伴う責任とは、例えば遠距離通学及び通学時の安全性の確保については、希望して指定校以外を選択して入学した場合の通学手段等は保護者の裁量の範ちゅうとあるように、経済的負担ができるかできないかという保護者の裁量が学校選択の指標にもなるという、義務教育における機会均等や無償とする原則から外れるという問題も生じるのではないでしょうか。
 また、教育長が言われた、いわゆる学校に預けっぱなしという保護者への見方が仮にあるとすれば、選択したことへの責任という建前で、意識的・無意識的に保護者には圧力として感じさせることにはならないかと、きぐするものです。
 選択に伴う責任を考えるとき、保護者の間には選択制そのものに対して共通理解が十分に得られているとは今の状況では言い難く、だからこそ、親の選べる権利が保障されるのだから、当然責任は親にあるという今の大勢を占めている見方ではなく、公教育の中の学校選択という視点で、親にも、学校にも、そして地域にも、それぞれの責任とは何かを考えなければならないと思います。
 では、選択に伴う責任とは、今まで保護者に求められてきた責任とどのように異なるのか、また保護者の責任の範ちゅうとは具体的にはどのように考えておられるのか、お聞かせください。
 以上で1回目の質問を終わります。

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