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蝶々効果 【広報えべつ2020年(令和2年)2月号特集記事】

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年1月28日更新

特集 蝶々効果-バタフライ効果-

江別市は大学が集まるまち。
市内4大学では、約1万人の学生が学んでいます。

とは言うものの、
「1万人いても、大学生は卒業したらそれっきりでしょ」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、近年、状況は少しずつ変わってきました。

地域に飛び出し、さまざまな活動に参加する「ジモ×ガク」で
江別の良さを知ろうとしている学生が年々増えてきているのです。

また、昨年には3名もの学生が、学業と仕事を両立する
学生起業家となり、自身の夢を叶えました。

そう、いま、江別市は

学生が地域に溶け込み、人と触れ合い、自身の可能性を探れる場所、
夢や希望を自由に叶えられる場所になってきている。

そんな変化が起き始めているのです。

今月号の特集では、大学生の今と私たちの未来に迫ります。

 

 

対談(1) 学生起業家に聞く 私たちはなぜ起業したのか

大学生起業家の写真

あきやまひさらさんの紹介 やまだよしきさんの紹介さいとうひろあきさんの紹介

―どんなきっかけで起業しましたか

齋藤 ボードゲームは友人と暇つぶしで始めたのですが、その世界観にどっぷりはまってしまいました。札幌にあるボードゲームカフェに遊びに行ったとき「こういう世界があるんだ」と知って衝撃でした。その時からずっと頭の片隅に店をやってみたいというのがあったんです。就職活動もしましたが、こっちの世界に突っ走ってしまいました。

山田 僕も自分がやりたいことを仕事としてやっていきたいと思っていたので、一緒に開業することを選びました。

秋山 私は大学3年生のゼミで、江別製粉の商品を使った、インスタ映えスイーツの商品開発をしていたんです。
ちょうど商品開発を始める前に香港旅行に行っていて、現地でバブルワッフルが流行っていたのが印象的で。日本でも香港スイーツが流行っているので興味を持ちました。当時、道内でバブルワッフルを扱う店は1店舗しかなかったので、これはチャンスだと思って、商品開発することにしました。
11月に商品として完成して、翌月に学内で試食会を行いましたが、その時点で店を作りたいと思っていました。

―なぜ在学中に起業したのですか

齋藤 「大学生がやっている」という話題性が欲しくて、どうしても在学中に始めたかったんです。
ボードゲームカフェは札幌に競合店があるので、今江別で店を開いたとしても、話題性がないというか。札幌の店が有名ですので、そっちで遊んだ方が良いと思われちゃうかなと。

秋山 私は完全にタイミングですね。「やりたい」と思って、その熱量が高いうちにやりたくて。融資とクラウドファンディングで資金を調達して、思い立ってから6か月で開業しました。
その頃はもう、開業しか考えられなくなっていて。ダラダラやってたら、たぶんできていなかったと思います。
 

―江別で今後やってみたいことは

齋藤 今後も江別に住み続けるので、まちおこしにも貢献できたらと思っています。
また、あくまで構想の段階ですが、外国人観光客にpRしたいですね。元々ボードゲームは、海外、特にドイツで作られている物が多くて、子どもの頃からずっと遊ばれている物なんです。江別にも外国人観光客を呼べるようなイベントがあれば良いなと。

秋山 私もやってみたいことが、たくさんあります。たとえば、誰でも古着をシェアリングできるサービスのプラットホームみたいな物を作りたいですね。シェアリングなら高校生でもお洒落を手軽に楽しめるかなと思って。
あとは、戸建ての家でシェアハウスをやってみたいです。物件が見つからなくてやれていないですが。
 

―悩んでいる人にメッセージを

山田 起業してみて思ったのが、「とりあえずやってみること」がやっぱり一番大事だなということですね。失敗は成功のもとってよく言うじゃないですか。本当にその通りだなと思います。失敗したら、何が悪かったかを考えて、次に生かしていくというのが一番大事だと思うので、悩んでいる人はまず何か行動をしてみて欲しいです。
 

秋山 思っていることはずっと発信していけば、絶対に誰か相談に乗ってくれると思うんです。全然関係ない人でも。SNSで「こういうことをやりたい」と発信したら「私の周りにこういう人いるよ」と繋げてもらえることもあるので。自分の希望は、どんどん発信していく事が大事だと思います。
みんな小さい頃の夢をどこかで諦めちゃう段階ってあるじゃないですか。私はそれを無くしたくて、純粋に夢を見続けています。
 

齋藤 起業の種類ってたくさんあると思うんです。たとえばボードゲームの世界でも、カフェじゃなく作家さんだとか。でも実際に商品を作るとなると一人では難しい部分もあるので、今後はそういう人の支援をしてみたいなと思っています。

対談(2) 地域と学生をつなぐ ジモ×ガク

近年、学生地域定着事業「ジモ×ガク」に参加し地域と関わる大学生も増えてきている。学生はジモ×ガクでどのような影響を受けているのか。関係者が語る。
 

ジモ×ガク関係者の写真

左から山田雅俊さん(ジモガク×卒業生)、深瀬聡さん(株式会社石川組人事部長)、竹田征嗣さん(江別市企画課大学連携担当)、藤本直樹さん(北海道情報大学経営情報学部先端経営学科准教授)、荒木洋佑さん(ジモ×ガク卒業生)

 

―「ジモ×ガク」が始まって4年。学生にどんな変化が見られましたか

深瀬 いろいろなイベントを通じて学生さんと関わっていますが、間違いなく地元に対する気持ちというのは上がってきていると思います。ジモ×ガクに参加するだけでも地元に対する気持ちを感じられますしね。

藤本 私が情報大学に赴任した6年前、情報大学では、山田君も所属していたボランティア部が大麻銀座商店街のお手伝いをするなど、地域との関わりが多少見受けられたのですが、他の3大学は立地もあって、アルバイトをする場所も、遊ぶ場所も、やっぱり札幌に向いていたような気がします。

4大学で学生1万人とはいうものの、大半は札幌や周辺の市町村から通っています。
その中で、江別を全然知らない、4年間通っていても、飲み会を野幌で2、3回やったことあるという程度で終わってしまうのがせいぜいです。そんな学生たちが、ジモ×ガクがスタートしたことで地域の事に関われるチャンスがすごく増えてきて、「関わってみたら楽しい」とか「熱い人がいる、すごく面白い」と感じているようです。
関わり方の密度には個人差があるでしょうけれども、江別や周辺の市町村を知らなかったという学生が、たとえば長沼町の夕やけ市の活動や、赤平や芦別のインターンシップに参加したり、観光施策の検証事業なんかに関わらせてもらって、その地域の取り組みや資源に関する認識を深めています。
今まで大学生が関わる機会や、知るチャンスが全くなかったので、そういうきっかけがジモ×ガクという地方創生のプログラムを通して準備できたというのが大きいと思います。

山田 最近ボランティアに参加したのですが、参加者が多く、そこに集まった人たちが、それぞれのやりたい内容にすごくマッチしていることに驚きました。江別の学生が江別でやりたいことができるという入口ができて良かったなと思います。

竹田 自分は4大学の出身ですが、学生のときはボランティアをあまり意識していなかったんです。当時と比べると、今は学生さんが、積極的に参加してくれているなと感じます。
当たり前にボランティアに参加できる環境が整ってきているということではないでしょうか。
また、学生さんも、漫然と参加しているだけではなく、「自分の成長や学びにしたい」という考えの方が増えてきているのかなと思います。
ジモ×ガクの参加者も年々増えていているので、今後地元に就職する人も増えていくのではないでしょうか。

深瀬 石川組も若い人が年々入ってきているので、今後も途切れずに入って欲しいです。

竹田 そういう意味でも、地域に目を向けてくれる学生さんが増えてきているなと感じます。

荒木 自分は高校の先生の勧めで大学に入りましたが、4年生まで何をしようか決めていなくて。そういうときに山田さんがキャリアサポート授業で「江別で建設の仕事をします」と話されたのを聞いて、そういう会社が地元にあるんだと初めて知って、そこから就職しようと決めました。

―江別に就職する良さや魅力は

山田 家賃などの物価も安いですし、スーパーも多くて生活には困らないなと思います。娯楽という面では札幌にはかないませんけど。あと、個人的には、地域に対して熱量をもっている人が多いというのが魅力でした。大学1年目にジモ×ガク関係者の方の働きを見ていて、自分も手伝いたいなというふうに思いました。

「この人のために頑張りたい」と思える人が、江別にはたくさんいたな、と思います。そこが自分にとって一番魅力に感じた部分でした。

一方で、気になるというと、少し違うのかも知れないですけど、寂しがり屋のお年寄りが多いなという印象もあります。

深瀬 お年寄りと若者のコミュニティが絡み合っていけたら良いのかもね。

藤本 今後もジモ×ガクを継続していくとしたら、高齢者を中心としたボランティアなども、企画してみたら良いかもしれませんね。

―ジモ×ガクの今後について

藤本 ジモ×ガクは色々なプログラムを通じて、地域の環境や人の良さなど『江別の魅力』を学生がインプットする機会なのかなと思っています。卒業後、一度都会で就職してみて、自力をつけたけれど、そこで暮らす中で、違う環境で生活してみたいとか、人間関係、ストレス、親の事などで戻らなくちゃいけないというときに、江別の魅力を思い出して、帰る場所として江別が選択肢として浮かんでほしいんです。

4大学の学生に中長期で江別のことをどこか記憶の片隅に残すというか、インプットして、江別の良さを心に残してもらい、必要になったときに江別を選んでもらう。言わば仕込みの時期なのかなと考えています。
今後も、大学教員としてそんな気持ちで協力していきたいなと思っています。

竹田 私も数多くの学生さんに、まず参加して欲しいというのがあります。藤本先生も仰っていましたが、今後Uターンの学生も増えてくると思うんですよね。
こういう活動を続けていくことで、江別に帰りたいと思ってくれる学生が、きっと少しずつ増えてくるんじゃないのかなと思います。来年度からは、内容をさらにアップグレードして、より地域に住むイメージができるような形にできたら良いなと考えています。

山田 とりあえず自分は江別で頑張って、東京にいる大学の同期には「山田がいるし江別に戻って来ようかな」と思ってもらえるようになりたいです。
ジモ×ガクの後輩にも自分の姿を見て、江別で働くっていいなと思ってもらえるように頑張っていきたいです。

荒木 僕も時間があればボランティアなどにも参加してみたいと思います。

―ジモ×ガクを通じ学んでほしいこと

深瀬 大学4年間という期間の中で、社会人になる準備ができたら良いのかなと思います。
準備ってなんなのかというと、社会人と学生とでは考え方が全く違うんだという心構えです。

学生は、就職するために大学に行っていると思いますが、技術的な事よりも、社会人としての心構えを準備していく必要があると思うんですね。そういう意味でも、ジモ×ガクは、とても良い場所だと思います。

さまざまな年代の人や職業の人と話すというのは多様な価値観を与えてくれますからね。
色々な人と会って、色々な考え方を受け入れてみてから社会人になると良いのではないでしょうか。
また、たくさん失敗して、打たれてから社会人になってほしいというのもあります。
失敗しないで生きてくると、社会人になって失敗したときに立ち上がれなくなってしまう人もいるので、できれば大学生のうちに、どんどん攻めた事をやって、失敗してみてほしいですね。
自分で企画して、作って、失敗して、へこんで、そして強くなるという貴重な体験をして、社会に出る前に成長してきてほしいですね。
 

 

みんなでつくる未来のまち えべつ

令和元年10月1日、江別市の人口は15年ぶりに増加しました。しかし、全国的な人口減少傾向はいまだ続いています。
人口減少社会では、経済や都市などが衰退していくと考えられており、中長期的に見れば私たちの住む江別市も例外ではないかもしれません。

ですが、それは確実に訪れる未来と言えるのでしょうか。
物理学の世界では、初期条件のわずかな差が、結果に大きな違いを生むことを「蝶々効果」と言います。
いま、江別には、さまざまなきっかけで地域へ関わろうとしてくれる若者が増えてきました。
こうしたわずかな社会の変化が、蝶々効果を生み、人口減少社会で予想される未来を大きく変える、そんな力になるかもしれません。

私たちも明るい未来を待ち望むばかりではなく、彼らとともにを未来のまちを作りませんか。彼らの生き生きとした姿は、きっと良い刺激を与えてくれるはずです。

未来は、今の私たちがどう生きるのかに委ねられているのですから。

 

蝶々効果  【終】