聞こえなくても、安心して暮らせるまちへ 【広報えべつ2019年(平成31年)2月号特集記事】
先天的な聴覚障がいがある村山さんですが、いつも遊びに来る孫の勇気君(8歳・写真左)と敦士君(5歳・写真右)とは、ジェスチャーや簡単な手話で意思が通じ合います。
手話は言語
昨年12月、江別市議会で、「江別市手話言語条例」(※1)の制定が可決されました。だれもが安心して暮らせる共生社会の実現を目指して、手話は言語であるという認識を広め、手話を使いやすい社会の実現を目的としています。
「手話」は、声によって伝えられる「音声言語」とは異なり、独自の体系を持つ「言語」です。手や指の動き、顔の表情などで表現し、文法も日本語とは異なります。
「障害者の権利に関する条約」や「障害者基本法」によって、聴覚障がいへの理解は広がりつつあります。しかし、いまだに「手話が言語」であることは、広く認識されているとは言えない状況にあります。
※1 江別市手話言語条例
「手話が言語であるとの認識を広く市民に普及し、もってあらゆる場面で手話を使いやすい社会を実現する」ことを目的として、だれもが安心して暮らすことができる共生社会の実現に寄与するために制定。市の責務や市民、事業者の役割などを規定している。平成31年4月施行。
だれもが安心して暮らせるまちを目指して
手話を使いやすい社会の実現に向けて必要なことは、まず、聴覚障がいについて知ることです。 今号の特集では、聴覚障がいとはどのようなものかを知り、だれもが安心して暮らせるまちを目指して、どうしたらよいのか、何から始めればよいのかを考えます。
インタビュー 聴覚障害がある生活
音が聞こえない、聞こえにくい人にとって、安心して暮らせる社会とはどのようなものでしょうか。
聴覚障がいがある村山ひな子さんに、お話を伺いました。
家族の助けに感謝
村山さんは、現在、同じく聴覚に障がいがある夫の清貴さんと2人暮らし。お互い助け合いながら生活してきました。 「息子と娘は耳が聞こえます。でも、聞こえない私たちと生活する中で、自然に手話を身に付けていきました。
子どものころから、来客時や電話対応など、いろいろと助けてもらったんです」。村山さんにとっては、家族の存在が生活を豊かにしてくれたと感じているそうです。
停電で感じた人のつながり
「去年9月の地震のときは大変でした。停電のため、来客を知らせるフラッシュランプが光らなかったので、人が来てくれても分からず、心配をかけました。娘が窓を叩く振動でようやく気付き、それからは手話の仲間や家族が駆け付けてくれて、状況を教えてもらったり、水を持ってきてくれたりと気遣ってもらったんです。本当にありがたかった」。
地震を機に、人とのつながりの大切さを再認識したと話す村山さん。災害時や突発的な事故などでは状況判断がしにくく、少しのことでも不安に感じることがあるそうです。そのようなときには、周りの人から話しかけてもらえると、声は聞こえなくても、話す表情を読み取って不安が和らいだり、手助けをお願いしやすくなると話します。
コミュニケーションが安心に
「お店や公共施設などで、手話が少しでもできる人がいると、とても助かりますし、安心できます。手話でコミュニケーションがとれるだけでもうれしくなります。手話が使える場面が増えると、本当にありがたいです」。ひと言だけでも、手話で話しかけられると安心すると話す村山さん。
「今通っている美容室では、最初は写真を見せてカットしてもらうだけでした。でも、そのうち美容師さんが手話を覚えて、コミュニケーションをとってくれるようになったんです。とてもうれしかった。友達になれたような、温かい気持ちになりました」。
村山さんは、社会全体で手話への理解が深まり、将来は、「社会が家族の代わりになれるような、温かいまち」になってほしいと、笑顔で思いを語ってくれました。
現在、村山さんご夫妻は、市内の小学校や大学で手話を教えています。児童も学生も聴覚障がいに対する偏見がなく、手話への理解が広がっていると実感しているそうです。
手話を学ぼう
江別市生涯学習推進協議会では、基本的な手話でのあいさつを動画で紹介しています
聴覚障がいがある人との向き合い方
聴覚障がいにはどのような特徴があり、どのような配慮が必要なのでしょうか。専任手話通訳者(※2)の菅原ひとみさんにお聞きしました。
- 専任手話通訳者 菅原 ひとみさん
自らも手話通訳を行うほか、病院や教育機関など、必要な場所に手話通訳者を派遣するコーディネートなども行っています。
※2 江別市では、市役所本庁舎に専任手話通訳者を1名配置しているほか、手話通訳者や要約筆記者を通院先の医療機関、学校などに派遣する事業や、左記の手話奉仕員を養成する講座の開催などを実施しています。手話通訳者などの派遣や講座のお問い合わせは、障がい福祉課(☎381-1031・ 381-1073)まで。
個性がある聴覚障がい
聴覚障がいといっても、障がいの程度は人それぞれです。全く聞こえない人もいれば、大きな声で話せば聞こえる人もいます。生まれたときから聞こえない人と、後天的に障がいを持った人では、手話への理解も異なります。
聴覚障がいに気づくには
聴覚障がいは外見ではわかりにくく、なかなか気づけません。電車などでの緊急アナウンスや災害警報、車のクラクションなどの警告音に反応していない人を見かけたら、聴覚障がいがあるかもしれないと思って対応しましょう。
コミュニケーションをとる際の注意点
聴覚障がいがある人とのコミュニケーションの取り方は、手話のほか、筆談や読話などさまざまです。障がいの程度や、これまでの生活状況によっても変わります。
「手話」は奥が深い言語です。まずはあいさつなどの基本的な手話を覚えることから始めてみてください。短い言葉なら、空中に文字を書く「空文字」も活用できる場合があります。
「筆談」も有効な方法です。しかし、日本語と手話では文法が異なりますので、長い文章だと理解しにくい人もいます。短文で、簡潔に書きましょう。紙がなければ、手のひらに指で書いて伝える方法もあります。
口の動きを見て言葉を読み取る「読話」ができる人には、はっきり、ゆっくり話して伝えてください。
もし、困っている聴覚障がい者に気付いたら、まずは、その人の視界に入って、積極的に話しかけてみてください。よりそう気持ちを示すことが、互いにわかりあえる社会に近づく第一歩です。
江別市手話言語条例制定記念講演会
講師 早瀬 憲太郎さん
2007年から2014年まで、NHK教育テレビ「みんなの手話」で講師を担当。映画「ゆずり葉」「生命のことづけ」の監督をつとめるなど、手話の普及に取り組む。
講演テーマ
第1部 「障がいを越えて思いを伝え合うために」
第2部 ミニ手話講座~手話で伝えよう~」
日時
2/17(日曜日)13時30分~15時45分〈開場 13時00分〉
開場
江別市民会館
料金
無料(申込先着250人)
申込方法
電話、もしくは申込書(市内各公共施設、市HPで入手可)を持参、FAX、Eメール
申込先
障がい福祉課 電話番号 011-381-1031、011-381-1073 Eメール fukushi@city.ebetsu.lg.jp
手話奉仕員養成講座要約筆記奉仕員養成講座
聴覚障がい者の福祉に理解と熱意のある方のために、手話・要約筆記のボランティア養成講座を開催しています。
○手話奉仕員養成講座:入門(昼・夜)基礎、養成の4コース
○要約筆記奉仕員養成講座:1コース
聴覚障がいを知らせるマーク
外見からは分かりにくく、配慮や援助が得られにくい聴覚障がい。もし以下のマークを着用している人が困っていたら、積極的に声をかけ、意思を確認してください。
耳マーク
聞こえが不自由なことを示すマークです。「手話で話しかける」「筆談をする」「はっきりと口元を見せて話す」などの配慮をお願いします。
聴覚障害者マーク
聴覚障がいがある人が、運転時に車などにつけるマークです。クラクションが聞えないことへの配慮が必要です。
ヘルプマーク
聞こえが不自由な人を含め、配慮や援助が必要なことが外見からは分かりにくい人が着用するマークです。